魔王

　id:sitappametaruから伊坂の小説を二冊借りた。魔王と砂漠。本当は砂漠の方から読んでいこうと思って、砂漠の二話目の途中までは読んだのだけれど、他の友人が「魔王読んだら面白かったよ」というので、どんなもんかと思って読んだらテンポが良くて思いのほか早く読み終わった。以下ネタバレの可能性につき。
　結論から言うと凄く心に残る良い作品だった。とは言えないかな。他の伊坂作品と比べて、圧倒的に回収されない伏線が多すぎる。伊坂作品で初めて読んだのがオーデュボンで、「結構もやもやしたまま終わる作品だなあ」と思ったけれど、そんなの目じゃないくらい。長く続く物語の中の、一部を切り取ってみました、この前後にも物語は続いているし、わざわざ与り知らないものを全部知らせようとは思わないよ、みたいな。説明はしないから勝手に読み取れ的な小説だった。
　二編収録されていて、初出を見ると「魔王」が出て一年以上経ってから視点を変えた「呼吸」という作品が書かれたようだけど、魔王だけを雑誌で読んだ人はさぞ消化不良だったのではないかなあ。かと言って続く呼吸で消化されたかと言えば全然そんな事もなく、精精「ああこういう作風なんだ」と思う時間を与えてくれるくらいの印象。
　文章は相変わらず読ませるし、ジョークの類はいつも通りの軽快さなんだけど、内容はちょっと私には重すぎたなあ。政治の思想の理論展開はとても良かったけれどもね。
あと、島はもう少し活躍してくれたら良かったのに。巨乳大好きー！