三年目の冬、オッサンと出会って、別れた。

電車に乗ってたんですよ。くだり電車なんで悠々座れるくらいの乗車率なんですね。なのに俺の目の前にオッサンが立ってたんだ。そんでそのオッサンが何と言うか、妙なにおいを放っていて、凄く懐かしいような、それでいて不快なような、微妙な気分になるにおいだったんです。
オッサンは結局数駅で降りてしまったんだけど、降りて行ってから「あっ」と。
あれは、俺が通ってた教習所のにおいだったと。

もうビックリする位どうでも良い。でも東京の地で地元のにおいを嗅いだって、言い方によっては凄く良い話みたいな感じになるかと思ったんだ。でも「オッサン」「におい」のキーワードじゃ無理だった。無理だったんだ。悪いのはオッサンじゃなく、ましてやにおいである訳がなく、心の荒んだ俺自身にあったんだって、そう思った勤続三年目の冬だったんだ。