東北急ぎ旅

私の友人には割と一般人より多めに変人が居る。その中でも周りに誇れるくらいの変人というのはほんの一握りだけど、今回はその一握りの変人「映真姉」のメールから始まった話。 

「日曜日 開かない?」
丁度友達と新しく出来たショッピングモールで、少し早い夕食を食べている時に届いたメール。とりあえずバイトは毎日あるが、別にいつの日曜でも休みは取れるという趣旨で返信すると、

「ねぇ、旅に出たくない?」
という返信がきた。うむ、以前軽井沢に行きたいと言っていたが未遂に終わってしまったあの件かなと思い、軽井沢ですか?と返した。

「 ^^ 石川県」
また無茶な事を言い出したなこの人は、と思った。

聞けば、映真姉の大好きなヴィジュアルバンドのツアーが、石川県金沢である、それに行きたい、それも日帰りが良い、何故なら翌日が朝から仕事だから。と相変わらずの超絶スケジュールで石川を目指したいらしい。それで、車持ちで割とドライブが好きな私に白羽の矢が立ったというわけだ。曜日を確認すると、「翌週」の日曜(つまり5日後)とかなり急。しかも私はその日バザーに出店していて、一日潰れていた。その趣旨を返すと、「駄目か…」とご丁寧に三点リーダまでつけて残念たっぷりなメールを返してきた。

と、沸々と心の内の感情が出てくる。
あー、これ行ったら絶対ネタになるな。
いつもの良くないクセだった。

金沢までは遠かった。前日に出店するメンバーに謝り、土曜のバイトを翌日の4時までこなし、3時間と少しの睡眠を取り、午前中はバザー会場に居て、帰り際に凄く白い目で見られつつ、午後に群馬の駅に集合したのち出発。事前に調べた所、高速でだいたい400kmくらい距離がある。時速100kmで4時間、往復で8時間くらい。午後から行ってライブを見て帰ってくるだけでも日付が変わるくらいだ。しかしネタの為なら、と麻薬のようにネタ、ネタと言い続ける私は少しおかしいのかも知れない。道中は色々ここに書いてもつまらないようなネタで盛り上がった。

メンバーは映真姉関係の遊びではかなりの確立で会う個人的にはかなりの面白さを誇るTM先輩という方と、今まで実際に見たことは無かったがブログを数度拝見したことのあるちづ先輩だった。このちづ先輩という方がまた良く出来た人で、人見知りなどはせず初対面である自分にすら突っ込みを入れる程ノリが良い方である。道中、ほとんど映真姉周辺専用と化した新堂というアーティストの歌の物真似ネタをしても、引く事無く楽しんでくれた。いや、本当にありがとうございます。

金沢に到着し、ライブハウスへ。実は私、ライブには全く興味がなく「ライブは行かないけど運転はするよ」という約束で出てきたのだが、いざライブハウスの前を通りかかると、何だ、この、黒い人たちは。肉に群がるカラスみたいだと思った。そして滅茶苦茶普通の格好をしてる自分がその場所へ行く事を想像するとなんか、もうこれは参加しない方が嘘だろうと思った。気付くとチケット代3800円が財布から消えていた。

実際、映真姉から何曲も「聞け!良いから!聞け!」と言われて聞いた曲がライブでも流れたので、楽しめない事は無かった。というかすごい楽しめた。物凄い格好で登場するアーティスト、たどたどしいMC、ヴィジュアルなのにすげーうまいドラム、物凄いポーズで頭をブンブン振り回す全ての観客、振り回しすぎて頭が私にぶつかってぶっ倒れるゴスロリ女、どこからその声が出るんだと思った隣の物静かそうな女の人のシャウト。若い人たちに紛れてなお光り輝いて見えたおばさん、そしてそれをみて「この人は大事にしなきゃいけない」とそっとその周辺だけ動きが緩やかになる観客達の気遣い。全てが重なり合って楽しかった(映真姉は髪の毛をぶんぶん振り回して、その御姿はまさに獅子舞)、それは映真姉が本当に喜ぶ楽しがり方とは多少違っただろうけど、それでも楽しかったと告げると、映真姉は喜んでいたと思う。

結果、今回もやはり「当たり」だった。と言うか、彼女らと何かをして楽しくなかった事があっただろうか。やっぱり映真姉は変人だったし、TM先輩はちょっと心配になるくらい笑っていたし、私は全力で自分の笑いを表現した。今回誘って来れなかった奴らは本当に勿体無かった、と同時に次に誘う時は必ず来て欲しいと思う。今回の旅の3割でも表現出来たらな、と考えたが、やっぱり私の稚拙な文章では無理があった。せめて最後まで読んでくれた関係の無い人達に、少しでも身内っぽさを消したエントリになればと考えたが、うまくいっただろうか?